「ここでは治療できない」~ダウン症がわかるまで②~
待ちに待った心エコーの日。
それまで一度も付き添ったことのない夫が「オレも行く」と言い出した。
夫とは心疾患の話はしていたけれど、ダウン症かもしれないとは伝えていなかった。
「心臓は手術すれば治る」と楽観的なことを言う夫に、治らないダウン症の話をするのが辛くて、先延ばしにしていた。
予約時間どおりに受付を済ませけれど、急患が入ったのか、やたらと待たされる。
志願して付いてきたくせに「こんなに待たせるなんておかしい」と愚痴る夫にげんなりした頃、ようやく順番が回ってきた。
エコー室へ入ると、前回の3Dエコーを担当した若い女医さんと心臓のエキスパートが待っていた。
エキスパートは女医さんに何か説明しながら30分以上かけて次女の心臓を見ていく。
その間、私に対しては何一つ話してくれない。
おそらく誤解を生むことが無いように、敢えて無言なのだろう。
とはいえ30分以上、ほぼ無言でお腹をぬりぬりされるのはなかなかの苦行だった。
やっと心エコーが終わり、いよいよ問診。
次女の心臓は思ったよりも深刻だった。
4つに分かれているはずの心臓の真ん中に穴が空いていて、2つあるはずの弁が1つしかない。
病名は房室中隔欠損症。
担当医から「うちでは産むことはできても、赤ちゃんの治療ができない。赤ちゃんの治療ができる大きな病院に移ったほうがいい」と言われた。
…え?ここで産めないの?
このとき妊娠34週。
もしもの時に備えて荷物も詰め終わっていたし、長女を産んだのと同じ病院ということもあって、心の準備も万端だった。なのに転院?
転院先の病院は、車で1時間ほど。
何かあったらどうやって病院まで行く?
長女はどうする?
頭が全く付いていけていないのに、慌ただしく書類の準備と転院手続きがすすむ。
いろいろな話をしているのに、ダウン症のダの字も出てこない。
ネットで病名を調べれば、次女がダウン症である可能性はかなり高い気がする。
心疾患にはいろいろな種類があって、心疾患=ダウン症ではないけれど、房室中隔欠損症はダウン症の合併症の代表的なものだ。
あぁこの医者は告知もせずに、次の病院に追いやるのだな、と思った。
医療界のルールは知らないけれど、ダウン症の可能性があるのなら、早く話してほしい。
できれば夫にも、医師から説明してほしいと思っていたのに。
かといって、こちらから確かめる気力もなく、ぐったりしながら病院を出た。
帰宅後、病名を聞いても相変わらず「大きな病院のほうが安心」と楽観的なことばかり話す夫に、次女はダウン症かもしれないと打ち明けた。