「確率は50%です」~ダウン症がわかるまで③~
次女の心疾患が分かり、大きな病院へ転院が決まった日、夫に次女はダウン症かもしれないと私の考えを話した。
夫は「そんなことないやろ」と否定的だった。
いっしょに医師からの説明を聞いたはずなのに、受け止め方の違いに驚く。
次女の心臓に影があると言われてから、私はたくさんのダウン症に関するSNSを読み漁った。
房室中隔欠損という病名が分かってからは、次女と同じ疾患でダウン症ではなかったという情報を探した。
誰かに「違う」と言ってほしくて、何度も検索して、見つからなくて泣いた。
あぁ次女はダウン症なんだなと一人でひっそりと受け入れていった。
転院先の初診日、この日も夫が付き添う。
この日は検査だけで終了。
妊娠35週の妊婦を急に受け入れることになった病院はバタバタしていて、様々な検査をやり直し、様々な説明を一気にして、書類をそろえていく。
あまりに慌ただしくて、この日もダウン症の話はできずに終わってしまった。
転院先で2回目の健診の日。すでに妊娠36週。
病院側から何も言われなかったら、こちらから聞こうと夫婦で話し合い、いざ出陣。
心エコー検査で、転院前の病院で次女の心臓を診てくれたエキスパートに出会った。
知っている顔に出会えてなんだかホッとする。
予定されていた検査が終わったあと、夫婦で個室に案内された。
そこにはエキスパートとベテランっぽい看護師さんがいて、次女の心臓について、詳しい説明があった。
ひととおり心臓の話をしたあと、エキスパートから「前の病院で心臓以外のことは何か聞かれましたか?」と確認された。
内心、来た来たと思いながら「何も聞いていません」と答える。
エキスパートは言いにくそうに「この病気はダウン症の合併症として知られています」と話した。
やっと聞けた、と思った。
次女の心臓に影があると言われてからダウン症の話をされるまで約一ヶ月。
毎日さんざん調べて、さんざん泣いたおかげで、この時は泣かずに話を聞けた。
夫が「それはどのくらいの確率ですか?」と聞く。エキスパートは少し考えて「だいたい50%くらいです」と答えた。
私にとって50%は低いなという印象だったけれど、夫は「うーん」とうなったきり黙りこんだ。
部屋を出るとき看護師から「大丈夫ですか?」と声をかけられる。
「大丈夫です」と答えようとして振り返ると、夫が泣いていた。