「できることはありません」~ダウン症がわかるまで④~
心疾患が見つかった次女の出産のため、妊娠34週で転院。
転院先での検査後、次女の病状とダウン症の可能性について医師から聞かされ、夫が泣き出した。
看護師さんが泣いている夫に気づき、個室に案内される。
心疾患がわかってからも「手術すれば治る」と楽観的だった夫。
私がダウン症かもと話しても聞こうとしなかったけれど、ついに医師に宣告され、かなりショックを受けている様子だった。
「元気に産まれてくることしか考えていなかった」と男泣きする夫につられて、私も涙を堪えられなかった。
夫婦でメソメソする私達の話を、看護師さんはゆっくりと聞いてくれた。
落ち着いた頃、看護師さんから「心臓の病気もダウン症も、今できることはありません。だからママはゆっくり過ごして、できるだけ長くお腹のなかで育ててあげて下さい」と言葉をかけられた。
看護師さんのこの言葉で私は覚悟が決まった。
次女はこれまで順調に育ってきたし、疾患があるなんて信じられないくらい胎動も元気。
幸い産む前に心疾患がわかったおかげで、新生児医療の整った大きな病院で産むことができる。
そしてどれだけ悩んでも、すでに36週。
産むしかない。
覚悟が決まった私とは裏腹に、夫はかなり落ち込んでいた。
ひたすらダウン症の子をもつ親御さんのブログやYouTubeを見て、何度も泣いて、夫婦で話をした。
そのうちにダウン症以外の障害のある子供をもつ親御さんの情報まで見るようになった。
世の中には様々な障害をもつ子供達がいて、その子を支える親御さんがいる。なかには本当に過酷な状況のなかで、それでも踏ん張っている人達がいる。
そうして夫は、ダウン症くらいいいじゃないかという心境に至ったようで、次女のことを受け入れ始めた。
長女が帝王切開での出産だったので、次女も38週に帝王切開で産むことが決まっていた。
それまでお腹にいてくれるように、私は毎日「まだだよ~」とお腹に言い聞かせていた。
できるだけ大きく、できるだけ丈夫に。
取り出される最後の瞬間までお腹にいてほしい。
願いが届いたのか、次女はお腹にとどまったまま、入院予定の38週を迎えることができた。